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規制の厳しいスマホ回線でも聴取に安心な「〓SBモード」を導入
2015年4月2日
アールウェイズ・ドット・ジェイピー(本部:東京都)は、運営する鉄道走行音配信ウェブサイト「ストリーム・エクスプレス」(英字題名:Stream Express)において、モバイル回線における苛酷な速度制限下での聴取に適した「〓SBモード」(Saving Bitrate Mode:SBM)のサービスを開始したことを、お知らせします。
■スマホ「通信速度制限」約半数が経験あり・そして過酷な速度制限
「通信速度制限」約半数が経験アリ R25スマホ情報局
http://smartphone.r25.jp/news/122564
あまりに過酷な速度制限、ソフトバンクで「3日間で1GB」を超過するとどうなるのか BUZZAP!
http://buzzap.jp/news/20140603-sbm-au-1gb-3days-restriction/
ご利用の際に通信制御することがある内容について(ソフトバンクモバイル)
http://www.softbank.jp/mobile/info/personal/news/support/201211091811300000/
http://smartphone.r25.jp/news/122564
あまりに過酷な速度制限、ソフトバンクで「3日間で1GB」を超過するとどうなるのか BUZZAP!
http://buzzap.jp/news/20140603-sbm-au-1gb-3days-restriction/
ご利用の際に通信制御することがある内容について(ソフトバンクモバイル)
http://www.softbank.jp/mobile/info/personal/news/support/201211091811300000/
高解像度動画やハイレゾ音声、ソーシャルゲーム等、モダンなウェブコンテンツはモバイル回線に負担を与え、ユーザーへの規制で抑え込まなければならなくなっています。
通信事業者の規定する通信量を越えたため、制限を受けたことがある利用者は約半数に上るとの調査記事も出ており、中には速度のみならずコンテンツの種類(内容)にも制限をかける苛酷な「制裁」を課す通信事業者もあります。
規制の対象となったユーザーは動画や音声ストリーミング,通話アプリ等の利用が困難な状況となり、ストリーミングサイトを運営する側からは無視できない問題となっています。
■実は「定格値」は驚く程低いモバイル回線
各通信事業者共、宣伝で高速度・定額を大きくアピールするものの、定額の範囲で使える通信量に一定の制限を設けており、規制値に達した場合通信速度が規制されたり、あるいは規制を解除するための追加負担が必要になっています。
また、表向きには厳しい規制を撤廃しつつ、旧料金プランについては規制を継続したり、新料金プランであっても標準の通信量(規制値)を低く設定して超過分の支払を行わせる、実質的に従量制な料金プランとした通信事業者や、高額になるオプション加入を要求する通信事業者や販売店もあります。
各通信事業者の代表的な規制の例として「1ヶ月で7GB」「3日で1GB」がありますが、各々24時間あたりの規制量を24時間連続通信した際の速度に換算すると、それぞれ「21.9kbps」及び「31.5kbps」と僅かな速度でしかありません。※
これが、モバイル回線の真の「連続定格値」です。
(そして私共は皮肉を込めて、その読み方を「れんぞくていがくち」とするとこを提唱します :-P )
「時間軸」という概念が無く、一瞬だけ早ければ良い文章や画像コンテンツでは無通信時間という「冷却時間」を設けられるのでほぼ問題はありませんが、時間軸を持ち常にデータを受信する音声や動画ストリーミングコンテンツ、IP電話やチャットのようなリアルタイムなコンテンツでは定格値(定額の範囲)を越えた過負荷利用となりやすく、容易に規制や制裁の対象となってしまいます。
つまり、大多数のモバイル回線では料金的に過負荷利用されること(規制解除費等追加負担の支払い)を見込んだ商品価格設定になっており、定格値・・・すなわち定額の範囲では1日中かけっぱなしにすることが困難なことになります。
一例として、通信各事業者でスマートフォン向けに動画配信サービスを月額数百円という低価格で提供している所もありますが、スマホ回線が定額・規制内で利用できる範囲に制限を設けていることを利用し、結果的に規制解除費等の追加負担無しには楽しめないよう、巧妙な料金設定が施されています。
※ビットレート(kbps) = サイズ(byte)×1048576×8×1024÷ダウンロード時間(秒)
なお、6時間睡眠として1日を18時間換算で切り詰めた場合は、それぞれ42kbps、29.2kbpsとなる。(18時間定格値)
■低速度回線や速度制限下でも聴取ができる「ECOモード」を2012年1月にスタート
前述のように、ストリーミング配信をするものにとって各通信事業者のモバイル回線の商品・価格・規制の設定は無視できない問題ですが、一方で配信をする側としても規制回線対策が必要と考えています。
私共では、低速度なアナログモデム時代からストリーミング配信に取り組んだ経験を活かし、かつ2011年3月11日に発生した東日本大震災の体験から、「通信量のエコロジー」をモットーに、最新のHTML5技術を応用した「ウェブプレイヤー」での「ECOモード」配信サービスを2012年1月より開始しました。
音質を実用的なAMラジオ放送程度に割り切り、特殊な方法やデータ形式に依らない汎用的な手段とデータ形式により、専用アプリを不要としつつ18kbpsという低ビットレートでの配信を実現しました。
また、2013年6月からは処理系の改良により「ECOモード」でもステレオ配信を開始。全てのビットレートメニューでのステレオ配信を実現しました。
■制裁の厳しい料金プランや従量制プランでも聴取に安心な「〓SBモード」を導入
「ECOモード」では、依然として制限の厳しい通信事業者の制限下回線では余裕が少なく、より低いビットレートでの配信が課題となっていました。
そこで最も厳しい事例をサンプルとし、18kbpsステレオ配信「ECOモード」での経験と研究を応用し、規制回線でも聴取に安心な「〓SBモード(Saving Bitrate Mode:SBM)」を導入いたしました。
この「〓SBモード」は配信ビットレート12kbpsのステレオ配信で、音質は更に割り切り短波放送程度になりますが、最低限必要なユーザー回線帯域幅は僅か16kbpsであり※、10分あたりのデータ量も約0.9MBと極めて少なく、苛酷な制限下での受信に対応した「インターネット配信におけるセーフティーネット」サービスです。
※配信データが占める割合を,回線帯域幅の75%とした場合.
■利用者増加中の格安SIMサービスにも
名称が「〓SBモード」となっていますが、NTTドコモやau等他の通信事業者回線や、ご家庭の光ファイバ回線、ADSL回線、CATVインターネット、公衆無線LANサービス等からもご利用いただけますし、アナログモデムによるダイヤルアップ回線でもご利用いただけます。※
※アナログモデムでは,28.8kbps以上のものが対象.
なお公衆無線LANにおいては,標準モードおよびリアルプレイヤー向け配信を含め,一部ご利用いただけない公衆無線LANサービスがあります.
「〓SBモード」や「ECOモード」は要求する回線速度(帯域幅)がとても低いので、回線速度や通信量を抑える事でコストを下げた各事業者の格安SIMサービスにも対応。
どこにいても、ラジオ感覚で手軽にお楽しみいただけます。
■「〓SBモード」で聴く方法
SBモードで聴く方法は、とても簡単です。
ブラウザで表示されている、ウェブプレイヤー配信メニューボタンの黄色い「〓再生 (SBモード)」のボタンを押すことで、SBモードでお聴きいただけます。
《メニュー例》
※開発版をPC用ブラウザ(Mozilla Firefox Linux版)で表示したものです.実際のサービス提供時とは異る場合があります.
■リアルプレイヤー向け配信でも、データ量を節約した聴取に対応
創設時より対応している「リアルプレイヤー」向け配信でも、標準の64kbps配信のほか、32kbpsと16kbpsによる配信にも対応しています。
リアルプレイヤーの設定を変更することでご利用いただけますので、テザリングを介したPCでも安心してご利用いただけます。
詳しくは、http://www.r-ways.jp/stream/realplayer.html をご覧ください。
■低ビットレート配信で、非常・混乱時でも提供できる取り組みを実践
2011年3月11日の東日本大震災では通信障害の発生により、通信が困難な状況もありました。
幸い、私共のウェブサイトは震災直後の電気※・通信の寸断も無く、またサーバー設置先のご協力もあり、サービスを維持できました。
※輪番停電については,結果的に回避されていました.
しかし、甚大な被害による通信路の迂回に伴う輻輳や安否情報等の通信需要の高まりに対し、私共は他に影響を与えないよう配信ビットレートを下げる取り組みをしました。
これは、普段から低ビットレートデータを備えていたため、比較的早く実施することができたものです※。
※リアルプレイヤー配信で実施.震災当時ウェブプレイイヤーはサービス休止中.なお,実施までに時間を要しましたが,現在は数分程度で切替えが可能なようシステムを改修しています.
■ストリーム・エクスプレス (Stream Express)とは
鉄道車輌の走行音を長時間(15分以上)あるいは全区間送信することを目標として、前身のウェブサイトが1995年に創設された、日本で最も歴史のある長時間鉄道走行音ウェブサイトです。
前身のウェブサイト開設当初より、データを受信しながら再生する「ストリーミング送信」を採用。
さらに、ブロードキャスト・サウンドプロセッサの導入により、実用的かつ日常的な品質を目指し、配信データの最適化と軽量化を図っております。
これにより、高ビットレート・高音質等を謳った過剰品質によるデータ浪費や肥大化とは一線を画し、利用者の様々な環境への配慮と負担軽減を心がけ、独自サーバーによる適切な帯域幅維持と回線負荷適正化を図ることで、多くの方に24時間いつでも気軽に聴ける「ラジオ感覚」でお楽しみいただけることを目指しています。
リリース日:2015年4月2日(正式版)
記載されている事業者名,組織名,商品名,サービス名等は、各事業者の商標または登録商標です。
「〓」は、「下駄記号」という「文字」です。
お問い合わせは、メールフォームにてお願いします。
と、まあここまでプレスリリース風に記してきましたが、「SBモード」自体は半分「4月1日ネタ」でした。
構想は2015年の年明けからでしたが、その間に通信各社の規制緩和で「3日で1GB」がネタにし難くなりかけたものの、各社の内容をよく見てみると実際にはそんなに甘くはないようで、特に旧プラン料金の方にはまだまだ厳しい制限が続くようです。
「SBモード」(SBM)という名は、一番規制が苛酷なS社で、料金的に安心し且つ規制の実態にストリーミング品質を合わせるどうなるのかという興味と、そしてS社に対する皮肉を込めて決めた名称ですが、「Saving Bitrate Mode」の頭字語にできることに気付き、こちらを示すことにしました。
(決して「SoftBank Mode」とか「Super Baldness Mode」ではありません :-P )
最初は4月1日ネタとして、単純に「ECOモード」のそれをモノラルにしただけで試していましたが、サンプリング周波数を落せば何とか「ECOモード」なみのナローなステレオで鳴らせることが判り、騒音下のフィールドテストやモノラルミックステストも行って品質を決めました。
「SBモード」のデータビットレートは12kbpsです。
必要な帯域幅は、ユーザー回線速度に占める割合(占有率)が75%の場合は16kbps、余裕をもって50%とした場合は24kbpsです。
一番苛酷と言われるS社の規制は公称128kbpsと言われているものの、実態は都市部で20kbpsくらいにまで落ちているという話が多いようです。※
※Google検索調べ。なお、青少年に相応しくないウェブサイト等を除外するよう検索。
「ECOモード」の18kbpsですと占有率75%でも24kbpsが必要な計算となり、20kbpsを僅かに越えてしまいます。
12kbpsとしたのは、占有率75%で20kbpsを切れる数値を目指したものであり、また10kbps台前半に納める目標もありました。
音質のほうですが、数値的に「ECOモード」の2/3に絞ってあり、補完のため高域特性を12kbps用に再調整しています。
短波放送程度の音質になってしまいましたので、音質に神経質な方とか、ハイレゾ・高ビットレート・高音質でなければ何事も不満な高音質至上主義的な方とかの聴取には極めて不向きですが、スピーカーで気軽に鳴らす程度であれば、まだまだ聴ける範囲にあるんじゃないかと思います。
事実、筆者の世代は短波でも当時最新のUSやUKのロックやポップを聴きまくったものです、KYOIとか。
実際、PCやPCに繋いだスピーカーだけではなく、FMトランスミッタでラジオに飛ばし、ラジカセやスピーカー付きの小型ラジオで鳴らしてみて調整しています。
これは、標準モードでもECOモードでも同様です。
実施決定からデータ完成まで、かかった日数は実質1ヶ月です。
こういった調整作業の際、Windowsでの作業のように都度中間ファイルに書き出すと大変な手間と時間がかかりますが、Linuxでシェルやスクリプトを用いてオン・ザ・フライでテストを行い、暇な時にサクっとできました。
再生についてですが、このように限界まで下げたものとなるとデバイス・ソフトウエア毎に再生性能の差が出るようです。
IE,iPohone,Adobe FLash向けデータはデコーダーの実装に様々なものがあり、それによって品質が大きく左右される傾向があります。実際、テストしていても感じます。
一方でFirefox,Chrome向けデータは後発規格で且つ規格自体がオープンなものであり、デコーダーもリファレンス通り(お手本通り)のものが占めるので、ソフトウエア的な面で品質の差は僅かなようです。
とはいえ双方共、サンプリング周波数をエンコーダーが対応できる限界まで下げたため、それが原因で品質を下げてしまう例を確認しています(ロボロボしというか刺々しく再生されます)。
もっとも、殆どのデバイスや基本ソフト,Adobe Flash Playerでは内部で再生サンプリング周波数を引き上げ品質を補完するよう出来ていますので、この現象に該当するのは古いOSやサウンドデバイスに限られると思います。
イヤホン・ヘッドホン等についてもテスト用に複数個使いチェックしていますが、若年者の方が好みそうな音質的に硬めのイヤホン・ヘッドホンは、ジャリジャリと荒が目立つ感じでした。
こういう傾向のものだと不利なのは否めませんが、当サイトの利用年齢層は比較的高いようなので実質的に問題は無いでしょう。
4月1日ネタとして作った「SBモード」ですが折角作ったので1日限定ではなく、デモンストレーションも兼ねて、このまま暫く続けていきます。
もうひとつ、とある動画投稿サイトの「規制回線モード」の考え方にインスピレーションを受けたことも記しておきます。
こういう考え方というか指向というかサービスが、もっとあっていいんじゃないかと思います。
あと書いていて気付いたのですが、モバイル回線で規制を食らったほうが連続定格値が上がるということ。(S社を除く?)
規制で最大速度が256kbpsに抑えられたとした場合、これ以上の料金負担が無ければ連続定格値も256kbpsとなる訳で、何と言う皮肉でしょうか。