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テープの寿命とタフネスさ
先日、カセットテープをUSBで録音できるPC周辺機器が発売された。
こりゃ便利そうだと見えたが、このカセットデッキ部、その昔テープの絡まりが多くて泣いた「インサイドローディングメカ」ではないか。昔のカーステレオで多かったタイプだ。
一見便利で格好良く見えるのだが、この手のメカは何故かテープを絡ませることが多かった。当然絡んでしまうと無理矢理取り出すしか無く、テープも破損。また、ワカメ状にしてしまうのも、この手のメカが多かった。
折角買ったミュージックテープ(録音済みの販売テープ)がこうなってしまうと泣くしか無く、そういうものはうっかり再生できなかったものだ。
という訳で、筆者的には「本当に大事な録音テープには使えないな」という判断。通常のテープデッキ等を使ってPCやUSBサウンドアダプタのサウンド入力にライン接続したほうが無難と考える。
※テープでローディングを伴うものは、テープを絡ませる等のトラブルが多い。ビデオデッキやDATもしかり。筆者がDATに手を出さなかったのは、それが理由。加えてカセットテープよりも民生用DATのほうが早くディスコン(discontinued)してしまっている。
ところで、その製品を紹介した、あるIT系サイトの記事中「(テープは)経年変化で年々音質が劣化してゆく」とある。
筆者の手元で長年(しかも殆どが15年〜20年超)ケースにも入れず平積み放置してあった、当時の音楽再生用テープが大量にあるが、さすがに何度も聞いて擦り減ったようなものはともかく、それほど再生頻度の高くなかったものでも、意外と音質の劣化を感じさせる程の変化は無い。
勿論、ケースに入れてあったものは、当時のクオリティを今だ維持している。特にメタルテープで録音したものは、今でも臨場感のある音を出してくれている。CD-RやDVD-Rのような色素記録のデジタルメディアと同列に扱うようなIT系サイトの記事は、いささか認識が不足していると見てもいいだろう。
(カセットテープの衰退を考えれば、原体験の無い20代,30代の記者がそう記してもやむを得ないのかもしれない)
もし多少劣化してあったとしても、今やデジタルエフェクトでどうにかなるものもあり、保存状態さえちゃんとしていれば、恐れる事は無いのだ。
これらは「MADE IN JAPAN」な国産テープで、しかも物質的にも品質的にも最も安定した時代に作られたものだが、1980年代にディスカウントショップや100円ショップ等で大量に売られていた「BONカセット」等の途上国・地域製安物テープではどうなのかというと、これが今でもちゃんと再生できているのだ。安物テープなりのクオリティーのままで。10年持てば良とも思っていたが、これらは古いもので25年を越えている。
一般的に古いカセットテープは、テープそのものよりも、リーダーテープと磁気テープを繋ぐ「スライシングテープ」の接着が弱くなり 「切断」した状態になるものが多い。
特に1970年代前半以前のものは品質的に途上期だったこともあり、テープそのものの切断もあるし、保存状態によっては「カビ」が生えていることもあるし、磁性体が剥離してしまうものもある。
切れたものは技術的にはテープを繋げばいいだけなので、部分欠落を僅かに伴っても全体が永久に再生できなくなるというものではない。
ただし、1980年代以降のテープでも保存状態が極めて良くない場合、不具合はあり得る。過信は禁物だ。
保存してあった状態が途中で止まったままの場合、その部分は外気にさらされたり、あるいはケース内部のガイドピンなどで「曲がり」によって形が出来てしまうので部分的に悪くなることがある。前述の平積みテープの中にも、このような状態による不具合が確認できるものがあった。
また、磁力の強いテープの場合、その磁力によって巻取られている他の部分に「転写」されることもあるので、定期的に巻直しすることも必要になってくる。
テープの保存は
また、ケースに入れたり直射日光や高温多湿を避ける、といったことは他のデジタルメディアでも同じである。
不幸にも保存状態が悪く音質の劣化や点在的な不具合のあるような現象があっても、嘆く事は無い。アナログメディアなので、例えノイまみれな状態でも再生でき内容を確認することはできる。「玉音放送」のように。デジタルならば再生不可能な状態だろうが、アナログなので無理矢理再生できてしまうのだ。
保存状態が良好なテープは、ともすれば色素記録のCD-RやDVD-Rよりも寿命を維持できると言われている。前述のとうり、デジタルメディアは一定以下の劣化の場合イキナリ再生不可能な状態になったり、あるいは欠落を伴うドロップアウトを起こすが、アナログテープはその単純なメカニズムが故、劣化したとしても音質の変化を伴いながら順当に再生できるからだ。
ガラス製のCD-Rなんて酔狂なものを作る方もいるが、本当に大事な録音であれば、光磁気ディスク(MOやMD)やアナログテープにも記録しておくべきだろう。
今、デジレコで録音しまくってCD-RやDVD-Rで保存している人達が多いが、寿命に懸念のあると言われるCD-RやDVD-Rは、デジタルメディア故に後年の「突然死」が避けられない。特にDVD-Rは短いもので10年程度しか持たないとも言われている。
1980年代前半に学校の花壇に埋めたタイムカプセルに入れたカセットテープと、2000年代にタイムカプセルに入れて埋めたCD-RやDVD-Rディスク。果して遠い将来、再生できるのは、どちらなのだろうか・・。
こりゃ便利そうだと見えたが、このカセットデッキ部、その昔テープの絡まりが多くて泣いた「インサイドローディングメカ」ではないか。昔のカーステレオで多かったタイプだ。
一見便利で格好良く見えるのだが、この手のメカは何故かテープを絡ませることが多かった。当然絡んでしまうと無理矢理取り出すしか無く、テープも破損。また、ワカメ状にしてしまうのも、この手のメカが多かった。
折角買ったミュージックテープ(録音済みの販売テープ)がこうなってしまうと泣くしか無く、そういうものはうっかり再生できなかったものだ。
という訳で、筆者的には「本当に大事な録音テープには使えないな」という判断。通常のテープデッキ等を使ってPCやUSBサウンドアダプタのサウンド入力にライン接続したほうが無難と考える。
※テープでローディングを伴うものは、テープを絡ませる等のトラブルが多い。ビデオデッキやDATもしかり。筆者がDATに手を出さなかったのは、それが理由。加えてカセットテープよりも民生用DATのほうが早くディスコン(discontinued)してしまっている。
ところで、その製品を紹介した、あるIT系サイトの記事中「(テープは)経年変化で年々音質が劣化してゆく」とある。
筆者の手元で長年(しかも殆どが15年〜20年超)ケースにも入れず平積み放置してあった、当時の音楽再生用テープが大量にあるが、さすがに何度も聞いて擦り減ったようなものはともかく、それほど再生頻度の高くなかったものでも、意外と音質の劣化を感じさせる程の変化は無い。
勿論、ケースに入れてあったものは、当時のクオリティを今だ維持している。特にメタルテープで録音したものは、今でも臨場感のある音を出してくれている。CD-RやDVD-Rのような色素記録のデジタルメディアと同列に扱うようなIT系サイトの記事は、いささか認識が不足していると見てもいいだろう。
(カセットテープの衰退を考えれば、原体験の無い20代,30代の記者がそう記してもやむを得ないのかもしれない)
もし多少劣化してあったとしても、今やデジタルエフェクトでどうにかなるものもあり、保存状態さえちゃんとしていれば、恐れる事は無いのだ。
これらは「MADE IN JAPAN」な国産テープで、しかも物質的にも品質的にも最も安定した時代に作られたものだが、1980年代にディスカウントショップや100円ショップ等で大量に売られていた「BONカセット」等の途上国・地域製安物テープではどうなのかというと、これが今でもちゃんと再生できているのだ。安物テープなりのクオリティーのままで。10年持てば良とも思っていたが、これらは古いもので25年を越えている。
一般的に古いカセットテープは、テープそのものよりも、リーダーテープと磁気テープを繋ぐ「スライシングテープ」の接着が弱くなり 「切断」した状態になるものが多い。
特に1970年代前半以前のものは品質的に途上期だったこともあり、テープそのものの切断もあるし、保存状態によっては「カビ」が生えていることもあるし、磁性体が剥離してしまうものもある。
切れたものは技術的にはテープを繋げばいいだけなので、部分欠落を僅かに伴っても全体が永久に再生できなくなるというものではない。
ただし、1980年代以降のテープでも保存状態が極めて良くない場合、不具合はあり得る。過信は禁物だ。
保存してあった状態が途中で止まったままの場合、その部分は外気にさらされたり、あるいはケース内部のガイドピンなどで「曲がり」によって形が出来てしまうので部分的に悪くなることがある。前述の平積みテープの中にも、このような状態による不具合が確認できるものがあった。
また、磁力の強いテープの場合、その磁力によって巻取られている他の部分に「転写」されることもあるので、定期的に巻直しすることも必要になってくる。
テープの保存は
- ケース+保管箱に入れる
- 立てて保管する場合はテープの巻きを下にする
- 直射日光を避ける
- 強い磁力のあるものから避ける(ブラウン管テレビ,CRT,IH家電など)
- 乾燥した場所に保管する(高音多湿を避け、カビの発生を防ぐ。シリカゲルを保存箱に入れると良い)
- 定期的に巻直す(できれば低速度で巻直すのが良し)
また、ケースに入れたり直射日光や高温多湿を避ける、といったことは他のデジタルメディアでも同じである。
不幸にも保存状態が悪く音質の劣化や点在的な不具合のあるような現象があっても、嘆く事は無い。アナログメディアなので、例えノイまみれな状態でも再生でき内容を確認することはできる。「玉音放送」のように。デジタルならば再生不可能な状態だろうが、アナログなので無理矢理再生できてしまうのだ。
保存状態が良好なテープは、ともすれば色素記録のCD-RやDVD-Rよりも寿命を維持できると言われている。前述のとうり、デジタルメディアは一定以下の劣化の場合イキナリ再生不可能な状態になったり、あるいは欠落を伴うドロップアウトを起こすが、アナログテープはその単純なメカニズムが故、劣化したとしても音質の変化を伴いながら順当に再生できるからだ。
ガラス製のCD-Rなんて酔狂なものを作る方もいるが、本当に大事な録音であれば、光磁気ディスク(MOやMD)やアナログテープにも記録しておくべきだろう。
今、デジレコで録音しまくってCD-RやDVD-Rで保存している人達が多いが、寿命に懸念のあると言われるCD-RやDVD-Rは、デジタルメディア故に後年の「突然死」が避けられない。特にDVD-Rは短いもので10年程度しか持たないとも言われている。
1980年代前半に学校の花壇に埋めたタイムカプセルに入れたカセットテープと、2000年代にタイムカプセルに入れて埋めたCD-RやDVD-Rディスク。果して遠い将来、再生できるのは、どちらなのだろうか・・。
文責・TH (2009年6月3日 初稿・2009年11月25日訂補)