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大井川鐵道
大井川鐵道(大鐵)の走行音録音(鉄道サウンド)です。

■録音一覧

大井川鐵道モハ6011
大井川鐵道モハ6011

パンタグラフは当時既に歴史的貴重品となった,旧型国電モハ63型由来のPS13を使用していた.

撮影:TH 2001年3月31日 金谷
(画像調整済)

大井川鐵道 大井川本線 6010系 モハ6011
金谷→千頭 2001年3月31日録音

録音・編集・プロデュース/TH 2020年編集作品
©TH


 元北陸鉄道河南線の6010系モハ6011の録音です。

 新製18m級アルミ車体に中古釣掛駆動という組み合わせですが、これは加南線(動橋線・粟津線・片山津線・連絡線・山中線の総称)で先に登場した日車製ロマンスカー6000系「くたに」の増備車として計画されたものの、予算面の都合で既存の15m級小型車の主要機器を流用したことから、流用台車の許容荷重や性能面を考慮して、当時としては画期的に軽量なアルミ車体となったものです。
 先の6000系「くたに」に倣い名称が与えられ、その銀色のアルミ車体と前面の曲面ガラス採用等による優美さから「しらさぎ」と命名されました。

 アルミ車体採用による軽量化は意図したものとなり、その基本レイアウトも当時の日本車輌が私鉄各社に納入していた2扉ロマンスカーに倣ったものですが、設計製造は名古屋本店工場によるもので、当時の親会社である名鉄からの影響も垣間見えます。

 加南線では「くたに」と共に主力として用いられたものの、国鉄との接続駅である大聖寺駅が、最寄り観光地への特急停車駅誘致による地元自治体間の激しい対立よる影響で特急停車駅から外されたことや(結局それぞれの中間に位置する現在の加賀温泉駅が拠点となり、当時の自治体も合併で現在は加賀市となった)、1960年代以降のモータリゼーションの影響から、加南線は1971年7月までに廃止されてしまいます。
 北陸鉄道の他線への転用も検討されたものの、当時の他線は加南線よりも車両限界が狭小であったため、当時同じ名鉄傘下であった大井川鉄道に6000系「くたに」と共に譲渡されます。
 譲渡後「くたに」は沿線の赤石山脈にちなんで「あかいし」に改称されていますが、「しらさぎ」は地名由来の名称ではないことから維持されました。

 大井川鉄道は直流1500V電化であったため、600V仕様の「しらさぎ」は「あかいし」共々、昇圧改造されずに付随車とされ、他の電動車に牽引される形で用いられるという状態でしたが、6010系「しらさぎ」は流用機器が主制御機以外は旧伊那電気鉄道由来の車両で用いられていた1200V仕様品で、主電動機も端子電圧750Vの東洋電機製造SE-102(GE-244Aのスケッチ品で,共に国鉄ではMT-4として扱われたもの)であったことから、1972年に改造を受けて1500Vでの自力走行が可能になるよう改められましたが、6000系「あかいし」は再電装・ワンマン改造されることなく1996年に廃車されています。

 その後ワンマン運転対応化され、主要機器や台車を名鉄3880系(←元東急3600系)由来のものに交換され、主電動機が東洋電機製造TDK-528系に、台車がモハ6011はD-18、クハ6061がKS-33改造品に、主制御器は遡る1972年の1500V改造時に名鉄標準品とも言える東洋電機製造ES-516Cに交換されています。
 よって、足回りは名鉄AL車同等の組み合わせとなっていましたが車体がアルミ製ということもあり、その走行音は鋼製の全金属車よりも硬さの少ない独特の雰囲気があります。

 釣掛駆動の旧品流用とアルミ車体の組み合わせは、かつては相鉄2100系にもありましたが、これもまた17m級旧形車の足回りを活かすため20m級軽量アルミ車体と組み合わされたもので、6010系「しらさぎ」と共にアルミ車体による軽量化が絶大な効果を発揮した事例ともなりました。
(相鉄2100系は後にカルダン駆動化され2代目2000系となり、2004年まで運用)

 1990年代に入り南海や近鉄,京阪等からの譲渡車が導入される中にあってアルミ無塗装車体で重宝されていましたが、1997年に当時併結運用していた1000系(元伊豆箱根鉄道駿豆線1000系)の脱線事故に巻き込まれクハ6061の連結器が破損、長期に渡って運用離脱する事態になり、当時から走行機器の老朽化が懸念されていたことから廃車される見込みであったところ、1000系のほうが車体損傷等が深刻だったため廃車対象となり、6010系は修理されて復帰しています。

 録音は運用離脱・除籍直前の、2001年3月のものです。
 桜の咲く観光シーズンに突入していた頃のものですが、時間帯のせいか幸い録音に影響するほどの混雑ではありませんでした。
 6010系「しらさぎ」は、その後2007年に加南線沿線であった石川県江沼郡山中町が譲り受け、現在の加賀市内で保存されており、その特徴的なアルミ車体の様子を伺うことができます。

 なお、大井川鉄道は2015年に名鉄グループから離脱し、現在は北海道に本社があるリゾート関連企業の傘下となっています。
 一方北陸鉄道は現在も名鉄グループに属しており、1970年代には鉄道全線を廃止する意向があったものの石川線や浅野川線は残り、2020年に浅野川線に元東京メトロ03系が改造のうえ搬入され、加南線廃止から約50年を経て北陸鉄道に再びアルミ車体の電車が入ることになりました。
(加えて、北陸鉄道初のVVVF車)


大井川鐵道モハ312
大井川鐵道モハ312

撮影:TH 2001年3月31日 千頭
(画像調整済)

大井川鐵道 大井川本線 312系 モハ312
金谷→千頭 2001年3月31日録音

録音・編集・プロデュース/TH 2017年編集作品 (2020年調整版)
©TH


 元西武351系の、そして本州では「MT7」主電動機搭載最後の営業車でもあった(現在検証中・以下同様)、大井川鐵道312系モハ312の貴重な録音です。

 大井川鐵道は観光路線でもあることから、譲渡時に西武所沢工場での改造により中間扉が埋められ、扉間の座席は初代西武「レッドアロー」5000系更新の際に不要となった転換クロスシートに取り替えられています。

 一方、下回りは西武351系の標準的な構成を堅持しており、台車は「TR14」(後のDT10),主電動機は「MT7」(日立RM-257の国鉄形式)と、木造国電譲りの構成となっています。

 この「MT7」は1923年に当時の鉄道院デハ63100形に装備された、木造国電後期の代表的な主電動機のひとつです。
1920年代、当時の京浜線電車延長や東海道本線熱海電化計画に合わせた長距離用電車が設計されており、その主電動機には新たな150馬力級電動機として英国メトロポリタン・ヴィッカーズ(MV)社より輸入することが計画されていました。

 しかし、1928年の関東大震災による復興で郊外への人口流出で電車需要が著しく増加したため、この長距離用電車は通勤用3ドア車「デハ63100形」に計画が変更され就役。この通勤用3ドア車の主電動機は「端子電圧675V、定格出力100kW、回転数635rpm」の同一条件の下、国内外メーカー6社の競作となり、中でも最大の92両分(368基)採用されたのが「MT7」です。
 この150馬力級主電動機6機種は木造国電後期を代表する機種となり、その次期150馬力級制式主電動機は上記機種の長所を採り入れ、鉄道省と各メーカーが共同設計した「MT15」として完成し鋼製化された国電に搭載されることとなります。


 さて、この録音は312系末期にあたる2001年のもので、丁度桜が開花した時期とあって途中笹間渡(現・川根温泉笹間渡)までオバチャン団体が乗り合せ、条件としては少々厳しいものがありましたので床点検蓋付近への近接録音としましたが、検索したところMT7搭載車の録音はあまり公開されてなく大変貴重な録音だと判り、録音から10年以上経ったこともあり編集・公開としたものです。

 当時西武351系およびその譲渡車、そしてMT7搭載車として唯一の現役車でしたが、録音したモハ312号の編成は翌2002年4月に家山駅構内で脱線事故に遭い休車。老朽化著しかったため復旧されず廃車・解体となってしまいました。
モハ313号の編成も程無く廃車されましたが、こちらは長らく千頭駅構内に留置された後、2016年7月に新金谷にて解体されたとのことです。

 なお、西武351系のうちクモハ355号は1990年の廃車の後、横瀬車両基地にて静態保存されており、基地公開の際に見ることができます。

こぼれ話

 大井川鉄道は、この日にモハ6011とモハ312を各1往復録音しています。
 運用については特に下調べしていませんでしたが、運良くこの釣掛2編成を録音できました。
 当時既に元京阪3000系や元南海21000系もあった中で(元近鉄16000系は当時急行用)、釣掛車は既に少なくなっており、欲を言えば元近鉄6421系のモハ421も録音したかったのですが、モハ6011は収録直後に廃車、モハ312も翌年の脱線事故による損傷で復帰できず廃車になっていますので、同じ日に釣掛2編成が録音できたのは、度々来れない身としては奇跡的と言えるでしょう。
 今となっては、これらの全区間録音はレア音源です。

 ところで2001年当時、前年に自動販売機の払い戻し機能を悪用した偽硬貨による詐欺事件が続出したことにより、その対策のため新500円硬貨の発行が始まり東京では急速に新500円硬貨が普及、自動販売機も新硬貨のみ対応になり旧硬貨が事実上通用しなくなっていき、一方で地方では未だ新硬貨の流通も対応・対策も進んでなく旧硬貨が通用できていた頃でした。

 新金谷の売店だったか、お釣りで旧硬貨が出て来たので、わざわざ新硬貨に変えてもらったりしていた覚えがあります。
 旧硬貨を受け取っても、既に東京では使いものにならなくなっていたこともあって(鉄道の自動券売機も旧硬貨を拒むほど徹底していたし店頭・窓口でも嫌がられた)、手間をかけさせてしまいました。


 大井川鐵道本線は大井川沿いに登っていき、千頭駅は山の中にあるのどかな駅という雰囲気がありますが標高は約300m程と、雰囲気的の割にはそれほど高くありません。
 蒸気機関車の運用も、あまり難が無い高低差ということのようです。
 (参考・東京都のJR青梅線古里駅で標高293m、鳩ノ巣駅が標高315m)

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制作・著作 Copyright © 1995 Toru Hirose (Stream Express)
from TOKYO, JAPAN.

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