
近鉄「アーバンライナー」21000系.
近鉄特急のフラッグシップとして長く君臨.
私鉄でも類を見ない都市間連絡特急車として,徹底した市場調査による綿密な計画を基に,それまでの設計思想から脱却した前例を見ないその姿と形は,業界に衝撃を与えた.
現在は全車更新工事を受け「アーバンライナーplus」と名称を変えた。
撮影:TH
2001年1月12日 近鉄名古屋駅
(画像調整済)

近鉄「伊勢志摩ライナー」23000系.
志摩半島に建設した自社のリゾート施設開業に合わせて製造された,21000系「アーバンライナー」に次ぐ固定編成特急車である.
現在は全車更新工事を受け,半数が赤系塗装に,残る半数も黄色系塗装となった.
撮影:TH
2001年1月12日 桑名駅
(画像修正調整済)

近鉄2000系.
6800系「ラビットカー」以来の近鉄一般車の代表的デザインであるが,本系列は「ビスタカー2世」10100系の主電動機を流用し1978年に製造さたものである.
3両編成で,主に準急や普通列車に用いられている.
撮影:TH
2001年1月12日 桑名駅
(画像修正調整済)
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近畿・中部地方2府3県という2都市圏に跨る広大な路線網を誇る近鉄ですが、近年では北勢線の三岐鉄道への譲渡、養老線・伊賀線の上下分離による移管等路線網の縮小があり、大手私鉄2位の東武鉄道とは約45kmの差の、大手私鉄最長・約508kmの路線長を有しています。
路線網は広大なものの保有車両数は1900両余と私鉄第3位で、一般車も特急車も2〜4両という短編成が主であり、これを柔軟に組み合わせて一般車・特急車共に最大10両まで組成していますが、貫通固定編成の最大両数は一般車両で6両で、8両固定編成は特急車「アーバンライナー」に限られてます。
長大固定編成が少なく大規模な置き換えも行なわれていないこともあり、車両の世代は広範囲で旧形車と新形車の併結も日常的にあり、趣味的には面白いものがあるとはいえ、利用客視点では(特に特急車は)当り外れの多いものともなっています。
関西地方私鉄によくあるように軌道法(路面電車)由来の郊外電車であることから、路線の大半を軌間1435mmの標準軌路線が占るほか、旧大阪鉄道,旧吉野鉄道を由来とする現南大阪線,吉野線と生駒・信貴の各鋼索線が1067mmの狭軌、三重県内の軽便鉄道を由来とする内部・八王子線が762mmの特殊狭軌路線と3種類の軌間を有していたのも特徴でしたが、特殊狭軌路線の分社・譲渡により3種類の軌間を持つ鉄道事業者は東京都交通局のみとなっています。
かつては名古屋線も1067mmの狭軌で1950年代後半から改軌準備工事が始まった所、折しも1959年9月の伊勢湾台風によって甚大な被害を受け、当時の社長の英断で復旧工事と改軌を同時進行させることで復旧し、同年12月には名古屋-上本町(現・大阪上本町)間の直通運転が開始されています。
改軌のために用意された新製台車も数多く、当時の旧形車に用いられたものは後の新車への転用が図られていますが、新車用も含めこれら台車は系列車両メーカーの手による「シュリーレン台車」と呼ばれるスイス由来の円筒案内形の台車で、長く近鉄車両の特徴でもありました。
近鉄といえば「近鉄特急」という程、多数の有料特急列車が運行されており、かつては2階建(ダブルデッカー)車を連結した「ビスタカー」が有名でしたが、JR在来線や首都圏私鉄に比して狭小な近鉄の車両限界(断面)では空間需要を満たす余裕がなく、「アーバンライナー」以降の一般特急車・汎用特急車は通常の構造に戻り居住性の改善が図られています。
また、近鉄特急はその運転本数が膨大なためか列車には個々の愛称・号数が無いことも特徴的なほか、名古屋都市圏(東海地方)と関西地方という2地方を自社路線で完結する列車があるのも大手私鉄唯一のもので、名古屋-大阪難波間(189.7km)には多数の有料特急列車が運行されています。※
※近鉄特急最長距離は「京伊特急」京都-賢島間の195.2km. 他私鉄最長は東武本線特急「リバティ会津」浅草-会津田島間の190.7kmで,こちらは大手私鉄唯一の東北地方乗り入れ特急列車となっている.
他社との直通運転は、狭軌時代の名古屋線で名鉄との臨時電車のみの直通運転や、架線電圧600V時代の奈良線と京阪本線との間で定期運転が行なわれていたものの、改軌や昇圧で早々に解消されています。
その後、1988年より京都線と京都市交通局(地下鉄)で相互直通運転が開始されたほか、1986年には大阪市交通局(地下鉄)と東大阪線(現・けいはんな線)で相互直通運転が開始、2009年には大阪難波へ延長した阪神なんば線との間でも相互直通運転が開始されています。
阪神との直通は、互いに車体長,車幅,扉数の違いがある車両※を相互に直通させるという、全国的に見ても大変珍しいものですが、標準軌の関西地方私鉄が、軌道由来で戦後も他社との直通を考慮することなく発展してきたことの現れとも言えるでしょう。
※近鉄は全長20.7m,全幅2800mm(ただし台枠部が2740mmの裾絞り車体),4扉。阪神は全長18.8m,全幅2800mm,3扉。近鉄車は台枠部は狭いが前後に長く、阪神線内駅の曲線部では一部の駅で非停車やホームを削る必要が生じている。
■掲載録音一覧
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