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博物館明治村 博物館明治村の走行音録音です。 |
![]() 宇治山田郵便局(国指定重要文化財) 内部には郵便局の出張所がある. |
![]() 札幌電話交換局前に停車中の2号電車. |
特記ある場合を除き 撮影:TH 1999年10月25日 (フィルム撮影) |
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本物を見て触れて乗って楽しめる「本物だけのテーマパーク」明治村 愛知県犬山市にある「博物館明治村」。1965年に"開村"したこの博物館は、全国に建てられた19世紀後半~20世紀初頭を中心とした貴重な建物を移築、実際に目に見て中に入れる形で保存・運営されているところで、ご年配の方なら懐かしい数々の建物があります。筆者の場合1960年代も末の生まれであり、実際に東京下町での生活の中でこれらの建物などに触れることはさすがに少なくなっており、「新大橋」など当時現存していた建築物が僅かにに幼少の頃の面影として残る程度です。 明治村は建物を保存するだけでなく、明治の雰囲気を実際に体験できるようにとのことで建物の中へ入ることができるほかに、例えば保存されている大井牛肉店では実際に極上牛肉の「牛鍋(スキヤキ)」を食することができたり、都度開催されているイベントで19世紀後半~20世紀初頭のパフォーマンスも再現されたりします。 19世紀後半といえば日本の鉄道が始まった時期でもあります。明治村では19世紀後半の鉄道ゆかりの建物や鉄道車両も保存されています。さらに明治村ならではのものとして実際に19世紀の蒸気機関車(SL)と客車が、そして日本で最初の電車路線である後の京都市電北野線の通称「N電」が動態保存されており、園内に設けられたレールの上を実際に走行、乗車することができます。 これら蒸気機関車と電車は、動態保存され実際にいつでも乗車することのできる「国内実動最古」のものです。 村内の蒸気機関車列車と京都市電はそれぞれ入園料とは別料金となっていますが、市電と蒸気機関車列車共通の一日乗車券があり、広い村内の移動にも便利でこのほうがお徳です。筆者もこの時は一日乗車券を使っています。 実動最古の電車と、20世紀初頭の蒸気機関車の走行音と、明治村の雰囲気をお楽しみください。 【2015年1月追記】 2010年12月20日より、明治村の蒸気機関車(SL)および京都市電は、老朽化による調査点検により運転を中止していましたが、京都市電は2012年9月28日より1号により運行を再開、蒸気機関車は12号により2012年11月8日より運行を再開しています。 録音の蒸気機関車9号と京都市電2号は引続き運転を中止し修理を行なっていましたが、趣味誌の電子版によると京都市電2号が2014年に運転を再開し、蒸気機関車9号も2015年1月に修理を終え習熟運転に入り、2015年3月頃より営業運転に復帰するとのことです。 また、運営団体は2012年4月1日をもって「公益財団法人明治村」となっています。 |
■録音一覧 |
京都市電2号
■博物館明治村 京都市電 2号 品川灯台-名古屋六連隊兵舎(1.5往復) 1999年10月25日録音 (約20分) 録音・編集・プロデュース/TH 1999年編集作品 ©TH |
■博物館明治村 京都市電 2号 車外録音 品川灯台-名古屋六連隊兵舎(往復) 1999年10月25日録音 (約10分) 録音・編集・プロ デュース/TH 1999年編集作品 ©TH 録音した2号電車は1911年梅鉢鉄工所製。1905年〜1913年に製作された旧京都電気鉄道の「大型車」のひとつで、車体は木造,吊革は皮と薹製の握り手,室内灯は電球2個,制御は直接式コントローラーに抵抗2個と35馬力モーター2個だけ(録音では車掌氏は40馬力と解説)、さらにブレーキは手巻き式のシンプルなもの。 駆動方式はもちろん当ウェブサイトでお馴染みの「釣掛駆動」、しかも2軸単車ですので乗り心地はまさに文明開化の頃そのものです。 電車は二人乗務。園内の運転ということもあって車掌さんのガイドがあり、この電車の生い立ちやエピソード,沿線建物の話などがあります。 この車掌さんの案内が絶妙でして、小学生相手であればやさしい口調で、大人の団体ともなれば軽く冗談混じりで案内したりします。また若車掌氏は丁寧に案内すると思えば、ベテラン車掌氏ともなると慣れた口調に絶妙な案内でそれぞれ雰囲気を演出しており、脱帽モノと言ってもいいでしょう。 今回の録音は車両内外からの録音を行い、車内録音編ではこの若車掌氏,ベテラン車掌氏の案内に轟音を奏でる釣掛サウンドの共演をお聞きいただけます。さらに純然たる走行音ライブラリとして車外に出したマイクによる走行音も録音いたしました。 出発前、カチカチと音がするのは手巻きブレーキの操作です。これでブレーキをゆるめてコントローラーを操作し電車は進みますが、その速度は最高でも時速10キロ程度。走った方が速いかも、というのんびりした速度で明治村の中を行ったり来たりしています。 バタバタする音がありますが、これは下げ開けた窓のものです。この日は暖かい日でしたので全部の窓が開いておりました。木造車体ならではの柔らかい音です。 見かけによらず低いギア音がします。速度が低いせいなのもありますが、これでも立派な電車で釣掛駆動です。 ■明治村京都市電2号諸元 ※1 形式/狭軌1型 2(弐)号 製造/1911年 製造所/梅鉢鉄工所 全長8.38m 全幅2.02m 定員43名(座席定員:20名) 台車/ブラッシュ(BRUSH) 21E形 ※2 主電動機出力/35HP (x2個) ※3 制御機/英国イングリッシュ・エレクトリック(EE) 車歴 京都電気鉄道 115 (1911年) 京都市電気局 ZN115 (1918年7月1日買収) 京都市交通局 15 (1955年12月1日改番) 博物館明治村 2号 (1967年3月18日運行開始) 更新 1990年3月 名鉄住商新川工場 ※1 資料提供/YY様 ※2 ブリル21Eのスケッチ生産品と思われる (TH) ※3 国立科学博物館のウェブサイト「産業技術の歴史(資料番号:100910131315)」によると,戦後25HPから35HPのものに交換したとある. http://sts.kahaku.go.jp/sts/detail.php?id=1009&key=100910131315&APage=32 |
蒸気機関車(SL) 9号
![]() 明治村9号蒸気機関車. 「東京駅」での付替え風景. 奥の転車台は人力. |
![]() ハフ13号客車. 2軸オープンデッキ構造の19世紀末期からの古典客車の姿を今に伝える貴重なもの. |
![]() ハフ13号客車の車内. 木造ニス塗り・2段明かり窓付き屋根も19世紀末期からの姿そのものである. |
![]() ハフ11号客車. こちらは扉付き構造. |
![]() ハフ11号車内. 扉付きだが,デッキ付きの構造ではない. |
■明治村 蒸気機関車(SL) 9号 明治村名古屋-明治村東京(往復) 1999年10月25日録音 (約17分) 録音・編集・プロ デュース/TH 1999年編集作品 ©TH 蒸気機関車(SL)9号は1912年、富士身延鉄道(現在のJR身延線の前身)により輸入された、アメリカ・ボールドウィン社製のC形(※)タンク機関車です。※C形=駆動軸が3軸のもの. その後神奈川県の日本鋼管鶴見工場を経て1973年に明治村に譲渡。展示・体験乗車を兼ねて動態保存されています。 訪れた日は蒸気機関車9号が客車3両を牽引して運転。録音は明治村名古屋駅での到着時から機関車の付け替え(機回し)から連結、出発から録音していましたので、その模様も入れました。 連結作業時に係員が距離を告げながら連結していきますが、螺式連結器(または「螺旋連結器」とも言う)のためバッファーが衝突しても特に大きな音がせず、現代の自動連結器や密着連結器等と大きな違いがあります。螺旋の付いた鎖を引っ掛ける時に初めて「ガチャン」と大きな音がします。 往路「明治村名古屋」から「明治村東京」までは客車のデッキで機関車最後部の真中から、復路は同じように客車デッキからですが、右側面から狙う様にマイクを向けて録音した記憶があります。往路・復路での聞こえ方が違うのは、この為です。 さて、その蒸気機関車9号の音ですが、20世紀初期の小型蒸気らしい軽やかなドラフト音で、2軸客車のジョイント音とミックスされたその音は、21世紀の現在ではまず体験できない貴重な音です。 この時代の機関車や客車が動態保存されている所は少なく、しかもこれだけまとまった距離を毎日走るのは日本では明治村だけですので、それだけでも尚貴重と言えるでしょう。 客車は3両保存されており、ハフ11号が1908年天野工場製の扉付車体、ハフ13号と14号は1912年新宮鉄道工場で作られたオープンデッキの木造2軸客車で、いずれも大変貴重なものです。 これらの客車は明治村へ来るまでは各地の鉄道を転々としており、ハフ11号は東京の青梅鉄道(現在のJR青梅線)の「メ4号客車」として製造され、その後1924年に山形の高畠鉄道(後の山形交通高畠線/1974年廃止),1936年に秋田の雄勝鉄道(後の羽後交通雄勝線/1973年廃止)に譲渡され、1971年に廃車の後明治村に。ハフ13号,14号は和歌山の新宮鉄道(現在のJR紀勢本線)から鉄道省(新宮鉄道の国有化),1942年に雄勝鉄道に譲渡され、後に明治村に入っています。 なお、蒸気機関車は他に1874年英国シャープ・スチュワート社製の12号蒸気機関車(SL)がありますが、この機関車は日本の鉄道最古の区間である新橋-横浜間(現在の汐止-桜木町)の開業2年目の増備機関車として輸入された「12号」機関車です。(後の160形165号) 1911年に愛知県の尾西鉄道に払い下げられた後、そのまま現在の名古屋鉄道(名鉄)となって入換機関車として使用。廃車から明治村入りするまで20年ほど時間があったのですが、その間にも名鉄の手で丁寧に保守・保存されていました。 1985年に経年100年以上となりボイラーが老朽化で限界に達し、水槽と共にボイラーを新製し交換。12号機関車のオリジナルボイラーは現在明治村東京駅前に展示されています。 この19世紀のボイラーで保存されているものは少なく、今に残る貴重な産業遺産です。 (新製したボイラーはさすがに1985年のものであるので全溶接構造で現代の規制に合うようにされていますが、外観は原型に近いように作られています) ボイラーは新製のものに交換されたものの、その外観は埼玉県大宮市の鉄道博物館に保存されている1号蒸気機関車(150形蒸気機関車)よりも、より当時のオリジナルに近いもので(1号蒸気機関車ほか数両の機関車は原型を留めない改造が加えられてしまっている)、この姿のままで21世紀の今も保存されていることは大変貴重です。 勿論な話ではありますが、蒸気機関車12号は国内の動態鉄道車両としては最古で(2020年現在,車齢146年)、蒸気機関車9号も機関車としてはそれに次ぎます(2020年現在,車齢108年)。 |
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