Stream Express
red.gif
Home > Sound Gallery > 私鉄・公営 その他 > 関西地方> 阪堺電気軌道

阪堺電気軌道
阪堺電気軌道
阪堺電気軌道の走行音録音です。

録音走行音一覧 (ここをクリック)

モ161形

モ351形

大阪唯一の路面電車
 関西地方の大阪「通天閣」や日本橋電気街に近い恵比須町とJR天王寺駅前(近鉄阿倍野橋駅脇)から住吉を経由し住吉公園,浜寺駅前を結ぶ大阪唯一の現存する路面電車が「阪堺電気軌道」(阪堺電軌)です。

 かつての基幹路線でもある、大阪の中心部と堺を結ぶ「阪堺線」(恵美須町-浜寺駅前間14.1km)は1909年に設立された旧阪堺電気軌道により開業し、翌年の1910年には恵美須町-浜寺駅前間の全線が開通。  並行する鉄道線の南海鉄道に対抗してボギー式路面電車を用意し激しい乗客獲得競争を繰り広げましたが、1915年に南海鉄道と阪堺電軌は合併します。
 一方で現在のメインルーととなるのが、JR天王寺駅前(近鉄阿倍野橋駅脇)からから住吉公園へ至る「上町線」(天王寺駅前-住吉間4.4km)で、1900年に開業した「大阪馬車鉄道」を始祖とするもので、同社路線の中では最も歴史のある路線でもあり、1908年に一旦馬車鉄道を廃止し電化工事を行っていた最中の1909年に、南海鉄道へ合併しています。

 特に阪堺線は鉄道と競争していた路線でもあり、大阪市電や他の路面電車と比較して大柄な車体と高出力が特徴的で、その「名残」なのか平均速度も地下鉄なみのものがあり、速度の高い走りが印象的なのが阪堺電軌の特徴です。

続きを読む ↓

 このほかに「平野線」(今池-平野間5.9km)がありましたが、並行する地下鉄路線の開業により1980年11月28日に廃止されています。さらに「大浜支線」(宿院-大浜海岸間)がかつてありましたが第二次世界大戦中に休止されています(正式な廃止は1980年11月)
 最近では上町線の住吉-住吉公園間0.2kmが、施設老朽化等を理由に2016年1月30日に廃止されています。

 以上が南海鉄道や戦時統合時の近畿日本鉄道を経て戦後分離独立した南海電鉄の大阪軌道路線として60年余りを送った後、平野線廃止後の1980年12月1日に南海電鉄全額出資による新生「阪堺電気軌道」として分社化しました。

 運転系統については、以前は阪堺線恵美須町-浜寺駅前間、上町線天王寺駅前-住吉公園間のほか、上町線から阪堺線へ乗り入れる天王寺駅前-我孫子道間が設定される計3系統でしたが、2009年7月のダイヤ改正で天王寺駅前-浜寺駅前間の系統が復活。一方で恵美須町-浜寺駅前間系統は朝夕ラッシュ時を除き恵美須町-我孫子道に短縮され、2013年には恵美須町-浜寺駅前間直通系統が全廃されるなどの変化がありました。

 車両面では最近まで1920年代に製造された車両が主力として数多く走っていたり、派手な広告塗装車で知られておりますが、近年では近代化のため新車・更新車を投入するなどの動きがありましたが、残された1920年代の車両たちも時折運用にも入り、機会は減っているものの21世紀の今も元気に走っています。

 本ページでは大阪唯一の路面電車の走行音録音を特集してお送りします。

【おことわり】収録走行音は雰囲気をそのままするよう必要に応じて編集を施しておりますが、車内放送についてはそのままとしております。車内放送の広告主と当ウェブサイトは一切関係ありませんし、それら広告の内容について一切保証・推奨等はしておりません。

モ168号/住吉 今でも阪堺を代表する車両であり、数少なくなった1920年代車両の生き残りであるモ161形.
同形車にモ151形や制御器を変更したモ301形もあったが、モ701形やモ601形の投入で,現在はモ161形のみとなった.
1920年代の大阪の路面電車を象徴する重厚な姿が特徴的.

撮影:TH 2001年1月12日
上町線 住吉
モ701 阪堺最新のボギー車となるモ701形.
冷暖房・ワンハンドルマスコン・電気指令式ブレーキ等を装備し近代化に貢献したが,その影で多くの旧形車が引退している.
親会社の南海電鉄に倣い,全車が東急車両で製造された.

撮影/TH 2001年1月12日
阪堺線・上町線 住吉

モ501形 阪堺初のカルダン駆動車モ501形.
当時の最新技術を使い,カルダン駆動,電気空気併用ブレーキ,空気バネ台車,多段式制御器の採用と画期的なものであったが,ブレーキは後に空気式のみとなっている.
車体は大阪市電3000形を模したものの,側窓は一段下降式と独自色を出している.

撮影/TH 2001年3月28日
阪堺線 恵美須町駅
モ171号 モ171号.
1930年,現在の鉄道車両製造会社「近畿車両」の前身となる「田中車両」で製造された.
2002年に廃車となったが,近畿車両関係者有志により,近畿車両徳庵(とくあん)工場の敷地内に静態保存された.

撮影/TH 2000年1月15日
阪堺線・上町線 住吉
(フィルム撮影)



モ161形
 2007年以降、日本国内の通常運用に供する現役営業用電車としては鉄道・軌道線を問わず最古で、現在でも多数が現役で大変貴重な電車が、モ161形です。

 モ161形は1928年から1931年にモ151形を基本とし13m級車体,4個主電動機装備はそのままに、連結運転用として連結器と総括可能な間接非自動制御器を装備して登場した車両です。登場当初は「電5形」と呼ばれ、低床路面電車としては日本で最初の連結総括運転車両でもありました。
 連結運転は1928年12月から平野線で開始され1961年5月まで行われましたが、その後連結運転中止により連結装置の取り外しと蛍光灯化,ドアエンジン取付,ワンマン運転対応改造,暖房取付などの改造を受けています。特に集電装置については「ポール」→「ボウ(Yゲル)」→「パンタグラフ」と3度も変化しています。

 モ161形は改造等による編入・編出が多く、制御器の交換で3両がモ301形へ編出したほか、モ151形からも2両(後のモ174,モ175/1927年川崎造船製)が編入されていますが、車体・台車・主電動機はいずれも同等か同じものを使用しており、モ301形とは制御器等の違いだけになっていました。製造当時からの車体の変化が少なく、また台車,主電動機は登場当時から変化が無いため、大変貴重なものとなっています。

続きを読む ↓

 戦前の関西の車両は関東よりも豪華で、シャンデリア風の灯具のほか車内の木工部等の凝った彫りものや造形などにその特徴が伺えますが、現在関西出自の車両でその様子を現役営業車両として残しているのは、この阪堺モ161形と琴電20形(元大鉄デロ20→近鉄モ5620形)を残すのみです。

参考画像/琴電20形23号車内・扉付近画像(別ウィンドウ)


 1928年12月竣工のモ161号等が通常運用に供される国内営業用電車として、また低床式車両としても国内最古。ワンマン運転設備・両替機能付運賃箱を備え夏季以外は通常運用に使われている。モ161形は国内現役最古且つオリジナルの車体.台車.主要機器を堅持している点も考慮すると、大変貴重な存在と言える。
 なお、車籍があり定期運用に供されないが臨時営業できる古典車両として、長崎電気軌道(長崎電軌)の160形168号(1911年製/元西日本鉄道←九州電気軌道1形)があり、日本最古で唯一の木造ボギー電車となっている。
 このほか、函館市交通局と広島電鉄に19世紀末期~20世紀初頭を再現した営業用2軸単車があるが、函館市交通局30形39号は20世紀初頭の車両を由来とする事業用車を、当時の図面を基に車体を新製し復元したものである。台車がオリジナルではなく車歴のみが継承されているものであるので、レプリカと見て良いだろう。広島電鉄の100形101号も他社ストックの2軸単台車等を用い、オリジナルの100形を模して1984年に造られたレプリカ車両である。
 また、施設内の動態車での日本国内実働最古の電車は、明治村京都市電1号・2号である。車体は後の復元・更新によりほぼ作り変えられているとは言え、足周りは京都のものを維持している。
 ちなみに鉄道線での営業用電車最古参車は、西日本では1925年10月竣工の琴電23号があるが車体は大幅な改造更新を受けており台車や機器も後年頻繁に取り替えられている。琴電にはこのほか1926年製の120号と300号や1928年製の500号もあるが、車体はオリジナルを維持しつつも台車や機器は頻繁に取り替えられている。いずれも2021年5月を以て引退することが発表されている。
 東日本での営業用電車最古参は上毛デハ101号で1928年10月竣工となっているが、こちらはオリジナルの車体に手が加えられているとはいえ台車や機器が製造当時のものや同型のものを堅持しており、実質的に日本の鉄道線営業用電車最古参となる。


モ161形諸元
全長13,716mm 全幅2,513mm 全高3,732mm
自重18.6トン
定員90名(座席28名)
製造所/製造初年 川崎車輌(161〜169/1928年) 大阪鉄工所(170/1930年) 田中車輌(171〜173/1931年) 川崎造船(174,175/1927年/151形より編入)
制御器 間接非自動制御方式 GE-M(161〜170/直列5段並列4段) 芝浦RMK(171〜175)
主電動機 芝浦SE-104B(600V 30kw)x4 歯車比57:16
駆動方式 釣掛式
台車 住友64C-24B2 軸距離 1,625mm センターピン間隔 6,706mm
ブレーキ形式 SM-3
戸閉機械形式 TKE-4
パンタグラフ PT-52L1
避雷器形式 PV-DC6AH
電動発電機 RKR-75S(750VA)
暖房機 シーズヒーター(90V/400W) 運転台2 客室12 取付改造 1983年
ワンマン化改造 1976年

※制御器の芝浦RMKは、米国GE社の制御機「Mコントロール」の流れを汲むもので(161〜170の「GE-M」制御器はオリジナルそのもの)、同じくGE製の主電動機「GE-247-I」の流れを汲む芝浦製主電動機「SE-104B」と共に、現在では大変貴重なもの。
台車の住友「64C-24B2」も当時最先端の鋳鋼製低床用台車で、これも貴重品。
※川崎車輌,川崎造船→鉄道車両部門は現・川崎重工業車両カンパニー、大阪鉄工所→現・日立造船、田中車輌→現・近畿車両

モ161形 モ161号 阪堺線 恵美須町-浜寺駅前
2000年1月15日録音 (約39分)

録音・編集・プロデュース/TH 2000年編集作品
©TH


 1928年製という今では超レトロなオールドタイマーも、ここではうれしいことに2010年でも現役で、収録当時は派手な広告塗装(収録当時)で運転されていました。
 にぎやかな大阪の街というイメージがあったため収録は困難を極めると思いきや、土曜の昼下がりということで乗客もまばらであり比較的静かなものではありましたが、何故か救急車に2度も遭遇(しかも堺市内では目の前の消防署から緊急出動し、少しだけ並走)するということもありました。街の中を走る路面電車ということでお許しください。

続きを読む ↓

 音的にはギヤ駆動音とモーター音のハーモニーが独特の響きを生み出しており、今や他都市の電車ではなかなか聞けない独特のものがあります。
 また今となっては珍しいフートコングを備えており、この録音でも音は小さいですが時々鳴らしているのがわかります。

 モ161号はその後、2011年6月に1960年代の姿に復元。外装は南海軌道線時代の塗装(屋根は赤茶色)とし、内装も塗装剥離しニス塗りとし床も床材を剥して木のままにし、手擦り等の真鍮金具も磨き出し輝きを取り戻しています。
 繁忙期対応等のためワンマン運転設備を残していますが、主に臨時電車として運行するとのことです。

モ161号(2000年1月) 2000年1月のモ161号.
撮影当時は沿線にあったショッピングモールの派手な広告塗装であった.

撮影:TH 2000年1月15日
阪堺線 住吉
(フィルム撮影)
モ161(2001年3月) 恵美須町電停に停車中のモ161号.
2001年3月取材時には広告塗装から標準塗装になった.
2011年6月に南海軌道線塗装(屋根は赤茶色)になり、方向幕も埋められて1960年代の姿に復元されている。

撮影:TH 2001年3月28日
阪堺線 恵美須町駅


モ161形 モ174号(二代)
阪堺線 恵美須町-浜寺駅前(往路) 2001年1月12日録音 (約43分)

録音・編集・プロデュース/TH 2012年編集作品
©TH



モ161形 モ174号(二代)
阪堺線 浜寺駅前-恵美須町(復路) 2001年1月12日録音 (約41分)

録音・編集・プロデュース/TH 2012年編集作品
©TH


 元は「モ151形」モ155号であった、モ174号(二代目)の録音です。

※日立造船(大阪鉄工所が前身)に譲渡される際に車体番号が「174」に書き換えられた、旧モ170号の録音ではありません。

 「モ151形」は「モ161形」登場の前年、1927年に川崎造船所(現・川崎重工車両カンパニー)で「電4形」として製造されたもので、制御器の違い(モ151形は当初直接制御器)や「モ161形」で備えられていた連結器等の総括重連装備が無いことを除けば、台車,主電動器はモ161形と同形で、車体は車内の屋根の造りが1920年代前半からの「セミダブルルーフ」構造であったことが、モ161形との見た目の大きな違いとも言えるでしょう。

 戦後、モ151形は戦災車両を整備する際、制御器を油圧カム式間接制御器(PM形制御器)にして復旧したものを「モ301形」に形式変更したのですが、更にモ151形で車体は1927年のをそのままに制御器をPM形制御器に変更したものをモ301形に編入。またモ151形のまま残っていたものも2両を除き1960年にPM形制御器に交換していますが、これらは形式変更されることなく1989年に廃車となっています。

続きを読む ↓

 一方、2両は同じく1960年に電磁単位スイッチ式の「芝浦RMK」という、米国GE製電磁単位スイッチ式間接非自動制御器「GE-MK」の流れにあるライセンス品に交換しています。
 これにより、連結装備を撤去したモ161形と仕様上の差が無くなった事もあり、この2両はモ161形に編入されています。(モ155,モ156→モ174,モ175)

 録音は前述のモ161号の翌年で、当時導入したばかりのウォークマン・プロフェッショナルにてメタルテープで収録しています。デジタル化は帰京後直ちに行なわれていたものの長い間手を付けずにあったもので、この機会に往復分それぞれ編集し公開したものです。
 当時阪堺電軌の車両の中で経年74年目の最古参だったモ174号の収録は偶然で、収録の翌月には運用を離脱し廃車されていますので、廃車直前の大変貴重な録音ということになります。

 時間は、復路恵美須町に戻った頃には日が暮れていましたので、往路は15時を回っていた頃に出発したと思しき、夕方の賑やかな時間帯ということにもなります。人が多かったので手を付けなかったのかもしれませんが、今となってはこれでも充分録音に成功したほうなのではと思います。
 往路・復路共に専用軌道の区間、特に復路の浜寺駅前-御凌前間はフルノッチ入れっぱなしで飛ばしています。

 実車は2001年の廃車後、長いこと我孫子道の車庫に置かれていましたが、2007年頃に某所の飲食店にモ174号の前面のみが譲渡され店頭で飾られていたものの、この飲食店は既に閉店しており行方は不明となっています。

モ174号/恵美須町 モ151形から編入されたモ174号.
モ161形の中では収録・撮影当時,最古参の1927年製.
この収録・撮影直後に廃車となり,後に正面のみ大阪府内の飲食店店頭で展示物として使用されていた(現在は閉店で不明).

撮影:TH 2001年1月12日
阪堺線 恵美須町駅
(画像修正調整済)


モ161形 モ175号(二代)
上町線・阪堺線 天王寺駅前-我孫子道(往復) 2000年1月15日録音 (約42分)

録音・編集・プロデュース/TH 2013年編集作品 (2014年公開)
©


 前述のモ174号と同じく、元は「モ151形」モ160号であったモ175号(二代目)の録音です。

 収録は前述のモ161号と同じ日の2000年1月で、上町線から阪堺線我孫子道へと直通する運用を往復録音したものです。
 この時点でも174号と共に現役最古参となっていましたが、収録から2年後の2003年に廃車となり、某所に搬出され店舗として利用されている模様です。

 天王寺駅前発車時、少々「賑やか」ですが一般営業電車故ご理解ください。

モ175/我孫子道 モ151形から編入されたモ175号.

モ174号と同時に作られ、モ174号廃車後は現役最古参車となった.

撮影:Lu 2000年1月15日
阪堺線 我孫子道
(画像修正調整済)


モ161形 モ164号(二代)
阪堺線 恵美須町-浜寺駅前(往路) 2001年1月12日録音 (約43分)

録音・編集・プロデュース/TH 2018年編集作品 (2020年公開)
©TH



モ161形 モ164号(二代)
阪堺線 浜寺駅前-恵美須町(復路) 2001年1月12日録音 (約40分)

録音・編集・プロデュース/TH 2018年編集作品 (2020年公開)
©TH


 モ161号と同じく、1928年川崎車輌製モ164号の録音です。
 製造当初はモ170号(初代)でしたが、戦後初代モ164号等3両がモ151形等と共に戦災復旧時に多段式間接油圧制御器とされてモ301形となり、空番を埋める形でモ164号となったものです。

 モ174号の収録と同じ日のもので、冬に定期運用されていた時のものです。
 既に掲載している他のモ161形のものとは状態の異なる音で、「個性」としてお楽しみください。

 なお、モ164号は2020年3月現在、残る現役稼動車両4両のうちの1両です。

モ170/住吉 モ164号.

元はモ170号であったが,番号整理のため改番となった.

撮影:TH 2001年1月12日
阪堺線 恵美須町


その他のモ161形画像

モ161号車内 モ161号の車内.
室内灯が蛍光灯化されていたり等するが,1920年代の鉄道車両の姿を今に残す貴重なものである.
モ161号室内の天井形状は「シングルルーフ」である.

2011年6月にペンキを剥しニス塗りとし,床は床材を剥し,真鍮部を磨き出しとし1960年代の姿に復元されているが,蛍光灯はそのままとなっている.

撮影:Lu 2000年1月15日
モ174号車内 モ174号の車内.
モ151形から編入されたこの車両の天井形状は「セミダブルルーフ」と呼ばれる,20世紀初頭の電車の姿そのままである.
また,出入口付近の木工装飾が凝ったものとなっているのも,20世紀初頭の関西の電車ならではのものであり,大変貴重なもの.

撮影:TH 2001年1月12日

モ161車内(運転台付近) モ161号車内運転台付近.
運転席背後仕切りの天井取付部にある装飾具のデザインが凝っている.

撮影:Lu 2000年1月15日
モ174号車内(運転台付近) モ174号車内運転台付近.
元モ151形出自の同車であるが,天井仕切りが直線状形状であることや,装飾具のデザイン等がモ161号と違う事に注目.
セミダブルルーフの特徴もよく伺える.

撮影:TH 2001年1月12日

モ161号の製造銘板(川崎車輌) モ161号の製造銘板.
「神戸・川崎車輌會社・昭和参年」と記されている.

同じ川崎車輌會社製で、且つ同じ年に作られた上毛デハ101号(国内鉄道線最古参電車)にも同じ銘板が取り付けられ、臨時運転されている。

撮影:Lu 2000年1月15日
モ174号の製造銘板(川崎造船) モ175号の製造銘板.
「川崎造船所・兵庫工場製造」と記されている.

撮影:Lu 2000年1月15日

住友64C-24B台車 モ161形が使用する住友64C-24B台車.
住友が得意とした鋳造構造による低床路面電車用台車.

撮影:TH 2001年3月28日
阪堺線 恵美須町駅



モ351形
 1962年、木造車モ101形の更新車として登場したのが、このモ351形です。

 前身となったモ101形木造車を、運輸省(当時)による木造車淘汰の指導により、モ510形と同様の全金属製車体へと更新したものです。
 1962年から1963年に5両が、帝国車輌工業で製造されています。

 主要機器をモ101形から一部流用していますが、米国ゼネラル・エレクトリック社製の主電動機が高品質でまだ使えることから、新型の空気バネ台車と組み合わせて装備されたほか、主制御機はモ101形が手動の直接制御機であったため、東芝製の油圧カム軸式間接自動制御器を新製し搭載ています。

続きを読む ↓

 モ101形は1924年に製造された木造車で、既に当時から大阪市電や他都市の路面電車よりも大型車体と高出力を持ち、強固な鋼製台枠により木造電車としては関西で最も長命な車両でした。
 その外観は迫力ある重厚な姿で、また車内は深く軟らかい座席にシャンデリア風の灯具を備え、後に登場する半鋼製車モ151形やモ161形へも通じています。

 この時代の車両は輸入部品の採用が多く、モ101形の場合は車体は日本製であるものの台車は米国ブリル製が、主電動機には米国ジェネラルエレクトリック(GE)製が新調され、主制御器は南海鉄道本線電車の付随車化で発生した米国Westing House(ウェスチングハウス. WH)製の大型直接制御器が転用されていました。

※当時. 1999年までに重電を含む様々な部門が売却されたが,旧WHの交通関連部門は幾多の売却・統合を経て現在はボンバルディア傘下となっている. WHの商標はライセンス管理会社のものとなり,その名をライセンスされた東芝子会社の核関連会社等とは,(同根ではあるが)もはや関係が無い.

 モ101形は戦後になると運輸省(当時)から木造車淘汰の指導もあり、主電動機を流用してモ501形と同様の車体と空気バネ台車を新製しモ351形に5両が更新されましたが、残りは安価に更新を行うため1967年に大阪市電1601形を入手し、制御器を新製のHL制御器としつつ、モ101形から再利用可能な台車や他の機器の移植を行ったモ121形10両に更新されています。

 ※モ121形を「元大阪市電1601形」と記すウェブサイトや文献等があるが、モ101形の車体更新については大阪市電1600形の「車体」を流用し、モ101形の台車等機器を移設し制御器は新製、1601形の主電動機・台車はモ205形に流用しており、当ウェブサイトでは「元大阪市電1601形」という表現は適当ではないと考え、そう記すことはしない。

 モ351形は台車が新製の空気バネ台車と釣掛駆動ながらも贅沢なものになり、制御器は東芝製PM形油圧カム式間接制御器に変わっています。このPM形油圧カム式間接制御器は非常に珍しいもので、現用且つ現存するものは、このモ351形のものだけとなっています。

 主電動機は1999年までモ101形以来のGE製主電動機(GE-247-I 600V/30kW)が使われていましたが、保守統一のため廃車発生品の芝浦(現・東芝)製「SE-104-B」に交換されています。  SE-104-B自体はGE-247-Iのスケッチ生産品であり独特の音は殆ど変わらず、全金属車体・空気バネ台車でいささか音が硬いものの、かつてのモ121形や現存するモ161形同様の「阪堺サウンド」が楽しめます。

 ※交換時期は諸説あるが、鉄道ピクトリアル2000年7月号臨時増刊「特集・路面電車渓RT」によれば、「昨年部品統一を図る目的でSE-104-Bに交換した」旨が記されている。

 モ351形は1986年に冷房化されており、夏季の日中にも運用することができる釣掛駆動車となっていますが、2016年にモ352が住吉停留所付近で脱線し修理されることなく、2019年に超低床車1101形に置き換えられて廃車となっています。

モ351形諸元
全長13,310mm 全幅2,511mm 全高3,650mm
自重17.4トン(冷房装置搭載以前は16.3トン)
定員90名(座席38名/353〜355は36名)
製造所/製造初年 帝国車両(351〜352/1962年. 353〜355/1963)
制御器 油圧カム式間接制御方式 PM-2A2(東芝)
主電動機 GE-247-I(600V 30kw)→芝浦SE-104B(600V 30kw)x4 歯車比57:16
駆動方式 釣掛式
台車 汽車会社KS-69(351〜352) 帝国車両TB-58(353〜355)
ブレーキ形式 SM-3
ワンマン化改造 1976年
暖房改造 1982年
冷房改造 1986年(351〜353) 1987年(354・355)

モ352/住吉 モ351形モ352号.
車体はモ501形と同様で冷房化も実施された.
撮影当時は派手な広告塗装であった.

撮影:TH 2001年1月12日
上町線 住吉
モ353/恵美須町 標準塗装のモ353.

撮影:TH 2001年3月28日
阪堺線 恵美須町

モ352のKS69台車 モ352号の川崎車輌製KS-69台車.

エコノミカル台車と呼ばれるもので,軸バネはゴム緩衝式となっている.
353〜255号は同型の汽車会社TB-58を使用している.

撮影:TH 2001年1月12日


モ351形 モ355号
上町線 天王寺駅前-住吉公園(往復) 2001年1月12日録音(約30分)

録音・編集・プロ デュース/TH 2001年編集作品
©TH


 モ351形の録音から、ギヤ音もモーターの音も盛大な355号の2001年1月の走行音録音です。
 全金属車体ということもあり、モ161形や,かつてあったモ121形と比べると、音は硬い感触があります。

 上町線は20分程度の短い時間でしたので、この録音では往復にして公開します。

モ355/住吉 住吉電停の平面交差を行くモ355.

撮影:TH 2001年1月12日
上町線 住吉


阪堺電気軌道 モ351形 モ354号
阪堺線 恵美須町-浜寺駅前 2000年1月15日録音(約43分)

録音・編集・プロ デュース/TH 2013年編集作品(2014年公開)
©TH


 阪堺線を全線走破する、モ354号の録音です。
 2013年のダイヤ改正により阪堺線を全線走破する系統が無くなりましたので、大変貴重な録音となりましした。

 これもまた、モ161形と比べると音が硬い感触があります。

モ354/浜寺駅前 浜寺駅前電停に停車中のモ354.
美しいグラデーション模様だが,これはラッピングではなく,何と塗装によるもの.
このように阪堺電車の広告塗装は凝った複雑なものも多く感心させられる.

撮影:Lu 2000年1月15日
阪堺線 浜寺駅前



阪堺線大阪市内の併用軌道 阪堺線の大阪市内の併用軌道.
一部の区間では,画面奥のように軌道敷が道路中心よりも偏った所がある,珍しい光景がある.
阪堺電軌は全体では専用軌道区間が比較的多く,全区間に占める割合は阪堺線で66.4%,上町線で45.4%となっている.

撮影:Lu 2000年1月15日
(画像修正済)
阪堺線堺市内の模様 阪堺線の堺市内の併用軌道(綾ノ町-御陵間).
大戦後の都市計画により拡幅された道路の中央部で植樹帯により仕切られていて,自動車の干渉を受けない「センター・リザベーション」スタイルとなっている.

撮影:Lu 2000年1月15日

Home > Sound Gallery > 私鉄・公営 その他 > 関西地方> 阪堺電気軌道

制作・著作 Copyright © 1995 Toru Hirose (Stream Express)
from TOKYO, JAPAN.

画像・録音の著作権者は記事中に表示しています。

本ウェブページサービス上の記事・写真・データ等の無断転載・転写、放送や出版物での無断紹介、複製・再送信、他の電磁媒体等への加工を禁止します。

リンクや転載などについて、詳しくはホームページをご覧ください。